日本ハムがリヴァプールFCとパートナーシップ契約を締結した理由

日本ハム アクティベーション スポンサーシップ リヴァプール

2019年4月、日本の食品メーカー「日本ハム」とパートナーシップ契約を締結したと発表した。今回は、イングランド・プレミアリーグ、リヴァプールFCと日本ハム株式会社とのスポンサーシップアクティベーションについてご紹介します。従来型のスポンサーにありがちな「露出」だけで終わらせず、SDGs、CSRの観点からも注目のアクティベーションです。

アクティベーション

日本ハムとのアクティベーション(フードバンク活動)について

リヴァプールFCには社会貢献事業として運営する「LFCファウンデーション」が存在し、その中に「レッド・ネイバーズ」というプロジェクトがある。このプロジェクトにおいて特に力を入れているのが、低所得者層向けの「ノース・リバプール・フードバンク」であり、日本ハムはこのフードバンクの取り組みの支援をおこなう。

Support to KOP RUN in Bangkok 2019

バンコクでのリヴァプールFC公式マラソンイベント「KOP RUN」で走り終えた約8500人のランナーに栄養補給として食品を提供。朝5時にスタートし、走り終わったランナーに朝食兼栄養補給のため、NH FoodsロゴとリバプールFCロゴを入れた紙カップに粗びきソーセージ入りうどんなどを入れて振る舞った。
ちなみに、リヴァプールFCの全世界のテレビ視聴者数は8億9,000万人で、うちアジア・オセアニア地域には24%を占める2億1,500万人がいる。また、同クラブSNSの世界中のフォロワー数は4億4,000万人だが、うちアジア・オセアニア地域は2億8,000万人と63%も占めるという。加えて、2013年7月にはタイ代表と親善試合を実施しており、タイをはじめとする東南アジアでも非常に人気のあるクラブだ。

Cooking with champions

第1回は南野選手、ファビーニョ選手(ブラジル出身)、アドリアン(スペイン出身)の3選手、第2回はシャキリ選手(スイス出身)、ネコ・ウィリアムズ選手(ウェールズ出身)の2選手が料理に挑戦。
動画の中では「料理経験の有無」はもちろん、「キャリアの想い出」や「好きな食べ物」などについて語っており、普段見ることのできない姿を見ることができる。選手は日本ハムとリバプールのロゴが入ったエプロンを身につけており、優勝者にはロゴ入りの帽子が贈呈される。動画を通じて日本ハムの食品に良いイメージを持って貰える仕組みといえるだろう。

The Legend of legends, Sir Kenny Dalglish visits Food Bank

ノース・リヴァプール・フードバンクは北リヴァプールで13カ所、食糧を必要としている15,000人の人々をサポートしている団体。しかし、コロナウイルス(ロックダウン)の影響でフードバンク運営が困難な状況に。また、普段は食品集めに協力してくれるサポーターがスタジアムに来られなくなった点も影響として大きく、以前は1年で22万トンの食品寄付を受け取っていたが大きく減少。
動画ではリヴァプールFCのレジェンドである、ケニー・ダルグリッシュ氏が、ノース・リヴァプール・フードバンクを訪れ、スタッフの皆さんにLFCを代表して感謝の意を伝えられました。最後には、選手からの感謝のビデオメッセージと日本ハムから配達用のバンのプレゼント

リヴァプールFC発信力について

リヴァプールFCは公式SNSを通じて、日本ハムとのフードバンクの取り組みを積極的に発信。
注目すべき点はその発信力だ。インスタグラムのフォロワーはなんと、3,465万人。(2022年1月1日現在)
ちなみに、Jリーグ最多はヴィッセル神戸のフォロワーは27.6万人、プロスポーツチーム最多は読売ジャイアンツの44.7万人。リバプールFCは選手個人のアカウントでも南野選手は103万人、モハメド・サラー選手はなんとリヴァプールFCを上回る4,684万人がフォローしており、発信力という意味では1人でヴィッセル神戸や読売ジャイアンツを軽く上回る。企業が自社ホームページやオウンドメディアで発信しても数千件程度のアクセスに留まってしまうところを、リヴァプールFCが関わるとその規模は数百万件まで伸びることが予測され、その発信力は桁違いだ。

ポイント

リヴァプールFCと日本ハムとのパートナーシップで注目すべきなのは、単なる「露出型」ではない点だ。
日本ハムは、日本国内では圧倒的な知名度を誇り、世界の食肉業界では売上高は7位だが、売上高の89.5%が日本国内に依存している状況だ。加えて、近年日本市場の伸び率が鈍化しており、頭打ちとなりつつある。さらに、食品業界の動向は、基本的にその国の経済状況と人口推移に比例し、日本の人口は長期的に減少傾向にあり、近年、その影響を受けるようになってきた。
そこで、日本ハムは海外市場展開のギア・チェンジに踏み切った。その一環として、2011年にベトナム、2016年にはマレーシアにも工場を設立したが、ASEAN地域では苦戦が続いていた。マーケットとしては、ASEAN各国の実質GDP成長率は2010年以降,安定的な成長を維持しており,ASEAN10か国では2015年以降約5%の成長率を維持している。また、総人口は6億6千万人で日本の約5倍以上の人口規模となっており、食品業界にとって追い風の市場だ。
しかしながら、苦戦が続いた要因として、ASEAN諸国での知名度の低さ(ブランディング)が挙げられる。また、ASEAN諸国では圧倒的な知名度を誇り、食肉業界では売上高4位の「CP Foods」の存在も大きい。
そこで、ASEANでの知名度と人気は抜群で、公式SNSの世界のフォロワー数の6割強がアジア・オセアニア地域のファンだと言われているリヴァプールFCに白羽の矢が立った。日本ハム側はリヴァプールFCの発信力を借りてNHフーズをASEAN地域で有名なブランドに成長させる狙いだ。

一方で、リヴァプールFCとしては、特に力を入れているプロジェクトである、低所得者層向けの「ノース・リヴァプール・フードバンク」を推進するためのパートナーを模索していた。背景として、リヴァプールはイギリス国内でも貧困問題が深刻化している地域として有名であり、貯蔵されている食品が足りず、供給が追いついていないという事実があったためだ。さらに、リヴァプールFCは世界有数のサッカークラブとして、地元だけでなく全世界に食支援を届けることをミッションとしており、日本ハムとオフィシャルパートナーシップを締結することで、推進をより加速できると考えたのだろう。

今後の期待

昨今コロナウイルスの影響もあり、日本でも7人に1人、ひとり親世帯では2人に1人が貧困に直面している。また、日本のフードバンクはボランティアに依存している部分が多く、課題もまだ多いのが現状だ。
そこで、是非とも日本ハムには、リヴァプールFCとの成功体験を日本でも実施していただきたい。プロ野球球団のファイターズのオーナーであり、リヴァプールと同じプロサッカークラブ、セレッソ大阪のオフィシャルパートナーでもある。加えて、北海道は生活保護世帯の子供数が全国3位、大阪府は全国1位である。
まずは、北海道、大阪府での日本国内での成功体験を積み、全国に展開できたら良いのでは 。

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